「えっ、と。桃田さんは中村くんと付き合ってるんだよね?」
「は?」
彼女の反応を見るのが怖くて私はあえて膝に顔をうずめて言った。
でも想定外な反応をされて、思わず彼女を見た。
大きな目が特徴な桃田さんは、鳩が豆鉄砲を食らったような表情をしていた。
だから私も同じ顔をさせた。
え、なんでそんな顔してるの!?
2人はクリスマス前から付き合いだしたんじゃないの?
ん?どういうこと……?
「……長田さん、それどういうこと?」
「あの、それは私のセリフ……」
ふたりして顔を見合わせる。
お互い噛み合っていなくて何を言っているのか分かんなくなってきた。
「長田さんは、あたしと淳介が付き合ってると思ってるの?」
「うん……」
そうだよ。だってあの日私も近くにいたんだもん。ふたりが両想いになった瞬間を私はしっかり聞いていたんだ。
「……あたし、淳介と付き合ってないよ」
耳を疑った。
桃田さんと付き合ってない?!なんで!?
じゃあ、なんであの時キミは『好き』と言ったの?
「でもあたしね、淳介にコクったの」
冬休みに入る前にね、と弱々しく笑って天井を見上げた。
たぶんその時のことを思い出しているのだろう。
表情が苦しく崩れたから。
「言うつもりなんてなかった。でもっ」
一瞬私を見てから、膝に顔を埋めた。
「言うしか、なかった」
そう言った彼女は静かに泣き出した。



