届かないこの想いを、胸に秘めて。






なんでそうやって他人の言う事を鵜呑みにするんだろう。

なんでちゃんと本人に確認しないの?



そうするから、大きな誤解が生まれて苦しむ人たちが増えていくんだよ。


そんな人たちが今どんな思いをしているのか、考えたことあるの?




私はそんなこと信じない。
信じるとしたら、本人に聞いてから。




桃田さんの姿を探しに歩き回ると、屋上へと繋がる階段を上った最上階の壁に寄りかかってうずくまった形の彼女を見つけた。



最後の一段を蹴って、距離を縮める。

名前を呼んでみた。

返事はやっぱりなくて、彼女はそのままの格好でいる。

少しだけ手を組んだ指がピクリと動いたのをみた。





「私は、……桃田さんが言ったことを信じるよ」


隣に座って言った。

私と彼女の間は30cmほど空いている。
微かに息をのむ音がした。



「……なに、そんなこと言うために来たの」


すん、と鼻をすすった桃田さんは感情のこもっていない声でそう言った。

なぜかそんな彼女を愛しいと思った。


おかしいよね。愛しい、だなんて。
でも思わない?なんか無性に守りたい!って思う衝動感。


ほら、桃田さんは多分本当は嬉しくて泣きたいのだけれど、そんな自分を見られたくないと思って強がっちゃうっていうパターン。

きっと、そうだよ。


私もそうしちゃうと思うから。