届かないこの想いを、胸に秘めて。





放課後。和海ちゃんと香奈恵ちゃんと一緒に帰るべく、教室を出て昇降口へ。



……結局、聞けなかった。
私のいくじなし。


でも、鴇田くん何もないような顔してたし、キミと鴇田くんが話してる時も普通だったし。


じゃあ、なんでキミはあんなことを言ったんだろう?



今日は丸一日そればかり考えていて授業の内容もあまり頭に入ってこなかった。




「今日のせっちゃん大変だったね〜」

「どーせ、中村のこと考えてたんだろっ──!?」

「っ香奈恵ちゃん!大きな声で言わないでよ!!」



普通に声に出す香奈恵ちゃんの口を手で塞いだ。


手を離すと「ごめんごめん」と笑って言うから、今度は睨んだ。




「ふっ、そんな顔しても可愛いだけだぞ〜」

「また、そうやって」



可愛くないし!
可愛いと思ったこともないし。

背は低いし、頭は馬鹿だし。いいところ何一つないのに。




「あんたねー。自覚持ちなさいよ」


ローファーに履き替えながら、ため息混じりに言う香奈恵ちゃんに和海ちゃんも「うんうん」と頷いた。


和海ちゃんまで……。



「雪菜は可愛い。だから、誰にも渡したくないんだな〜」

とにやりと笑う香奈恵ちゃん。


それに続けて和海ちゃんが「実はせっちゃん、人気者なんだよ?」と含み笑いを浮かべた。



……なにそれ。そんなこと言われても何も出てこないよ?

それに私が人気だなんて、ありえない。


告白なんて一度しかされたことないんだよ?
だから、ありえないよ。



というか、人気者っていうなら2人の方じゃん。



私に気を遣ったのかな?
そんなことしなくても気にしないのにー。
2人は十分モテるって分かっているんだから。



そう思いながらローファーに履き替えた。