届かないこの想いを、胸に秘めて。






なに、この状況……。


ふたりはなんでここにいるの?


何を話しているの?

なにを……っ。




一瞬、頭に過ぎった『告白』の文字。




まさか。

え、やだ。こんな形で聞くなんて、イヤだっ。




っ……なんでこんな時に限って逃げられないのっ!




その瞬間、全身に太く、鋭く、尖った何かが私を貫いた。




それはキミの言葉だ。

好きな人への、想いが。



体をUターンさせ、2階の渡り廊下を駆けて、さっき下りてきた階段を駆け上る。




聞いちゃった……どうしようっ……どうしようっ。

キミの言葉が、声が、煩いくらいに頭に響く。


鳴り止まない。


どうしようっ。わたしっ、聞いちゃったっ。





「あ、おかえり〜。遅か……雪、菜?」



本から目線を外して私を見た。

香奈恵ちゃんの目が大きく開かれて困惑を滲ませて近寄ってくる。





「どうした?何があったの!?」

私の肩を掴んで顔をのぞき込む彼女の目を見た。

その途端、プツッと我慢していたものに小さく穴を開けられた感覚を覚え、そこから熱いものが込み上げてくる感覚に襲われた。





「うぁっ……か、なえちゃ、……わ、たしっ」



聞いちゃったよっ。



「や、だよ……っ……ぅふぇ……っ」




やだ。やだやだ。ヤダ!

こんな終わり方ヤダ!


香奈恵ちゃんの腕の中で溢れんばかりの涙を流す。

手で覆っても涙はあちこちに流れ落ちて、香奈恵ちゃんのブレザーを濡らしていく。





「そんなの気にしないで泣きな」


私の心を読んだのか分からない。
でも香奈恵ちゃんはぎゅっと優しく強く包んでそう言ってくれた。