誰かに肩を叩かれて、今に引き戻された。

横を向くと大好きな親友が笑っていた。



「なに、ボーッとしてんの」

「もう、HR終わったよ」


次移動教室だよ、と私に笑いかけるふたり。

私は慌てて机の中から教科書、ノート、筆箱を取り出して席を立った。


「大丈夫?なんか顔赤いよ?」

和海ちゃんが顔をのぞき込んで言った。


「だ、大丈夫だよ!」


気付かれないように平気を装って、笑顔を見せた。


だって、好きな人をみて真っ赤にさせてるなんて言ったら絶対からかわれるもん。



それに、儚く終わる恋だから。
ふたりに好きな人がいるって伝えても意味がないと思うから。



「和海、違うよ。雪菜は水族館が楽しみでしょうがないからワクワクを通り越したんだよ」


ねっ、と香奈恵ちゃんは私を見て清々しい笑を向けた。