届かないこの想いを、胸に秘めて。






笑いが治まると一旦静けさが教室に広がった。


意外にも緊張はしていなくて、今なら何でも言えそうだと思った。

和海ちゃんがそういう空気に変えてくれたのかもしれない。


だから、今なら言える。大丈夫。



私は深く息を吸い込んで、ゆっくりと吐いた。




「香奈恵ちゃんって、……中村くんに告白されたこと、ある?」


噛まずに言えたことに小さく胸をなで下ろす。

その瞬間、香奈恵ちゃんの大きな呆れた声が私の鼓膜を震わせた。



「何を言うのかと思ったら、そんなこと?」


苦笑してから、ぐいんと後ろに逸れた。
強ばっていた体をほぐすかのように。

私に向き直ると、にいっと笑った。



「ふーん。それで私を避けてたのか」


ふんふんと縦に首を振りながら、私をみた。

変な汗が背中を伝う感じがした。

獲物を捕らえるような目つきに、ひるむ。



「ご、ごめんね」


私はそう言うことしかできなかった。