届かないこの想いを、胸に秘めて。






「ねー、香奈恵」



下を向いたまま隣にいる和海ちゃんの声を聞いた。


そう言った和海ちゃんの表情は分からないけど、声が笑ってる。


すぐにその理由が明らかになった。




「なんか、刑事ドラマみたいなんだけどっ」


喉を鳴らしながら辛そうに笑い出す和海ちゃん。




「香奈恵が刑事で、せっちゃんが容疑者っ~~──」


指を指しながら説明して、それからはもう限界みたいで今度は声に出して笑い始めた。

次第には机に伏せて、声にならない笑い方をしながら肩を大きく震わせてる。



香奈恵ちゃんと私は目を合わせてキョトンとさせた。

そして、ふたりして笑った。




たぶん香奈恵ちゃんも私と同じことを想像したんだと思う。



口々に『刑事』『容疑者』とか和海ちゃんが言ったワードを笑いながら言っていたから。



この状況に想像を重ねたら、そのまんまで可笑しくなった。