届かないこの想いを、胸に秘めて。





気分はそのまま暗くなる一方で、駅に辿り着き、改札口を抜けた。

エレベーターで上のホームまで行くと、ひとりベンチに座っているキミがいた。


リュックから本を取り出して読み始めるその表情は、とても真剣で、私の心を跳ねさせた。




……中村くんって、本読むんだ。

新たな一面を発見して心にメモをとる。
そして、嬉しくなった。


私はキミの少し離れた自販機の隣に立って、横顔を見た。



なんか、楽しそう。

本に目を通しながら小さく笑っているキミに、私も小さく笑った。





──ドキ。


不意にキミと目が合った。


キミは目を少し大きくさせて私を見る。

多分、私もキミと同じ顔をしているんだろうと思った。


ふたりして会釈をした。
おかしかった。ぎこちなく下げた上半身が。


まるで、ロボット。