「え?湊様?」

「高野さんの名前呼んだけど?」

「高野さんと湊様って知り合いだっけ?」

そんな声がちらほら聞こえてくる。


誰と誰が知り合いかどうかなんてほっといて欲しい。

まあ相手が逢坂 湊だからみんなが騒ぐのも無理ないか。

私としては騒がれるのは避けたいところだ。


「私に何か用ですか?」

淡々とした私の声を合図に教室中が静まり返った。

誰もが私と逢坂 湊の声に耳を傾けている。

嫌だ、本当に嫌だ。

好奇の目にさらされて、気が滅入りそうだ。


「俺についてきて」

私の目を捉えてそう言うと、踵を返して歩き出す彼。

急いで鞄を持ち後をつけるけど、逢坂 湊は全く後ろを気にする様子もなく先を歩いていく。

私がついていってもついていかなくてもわからないんじゃない?