「九条さん。私、帰りますね」
「え?ああ、高野さん帰るんですか。おい、隼人」
「は?また俺かよ。嫌だし」
成宮 隼人は相変わらず露骨に嫌な顔をして、私に鋭い視線を向けている。
だから嫌なんだ、送ってもらうのは。
「隼人、俺が行く」
「は?」
「え?」
急にそんなことを言い出したのは、逢坂 湊だ。
あまり喋ったところを見たことがなかったから驚いた。
「湊が?」
「おう。ちょっと寄りたいところがあるから序だ」
「そうか。じゃあ、頼む」
彼が自ら送るなんて言い出すのは実際、珍しいことらしく、九条 拓も成宮 隼人も驚いている様子だ。
九条 拓や成宮 隼人はどんな人か、大体わかっているつもりだけど、この人のことはわからないからちょっと気まずい。