「…いただきます」

フォークを刺して、ぱくりと口に含んだ。


ああ…。とても言い表せないけど、凄く美味しい。

ふわふわのスポンジと甘すぎないクリーム、口中にいい香りが広がって…懐かしい、味。


これは香川 佳穂が興奮している理由もよくわかる。


「美味しい、ね」

「でしょ!お口にあったみたいでよかった~」


目を細めて嬉しそうに話す彼女は嘘をついているようには見えない。

本当に、彼女は食べなくてよかったのだろうか。


「気に入ってくれたなら、毎日食べる?」

「太るよ」

「うっ。まあ、そうだよね~」

「それに…。私、毎日は来れないし」

「えっ!なんで?」

「だって塾あるから。だから明日は来れない」

「塾とかそんなの通ってるの、知らなかったあ」


だって、言ってなかったもの。

香川 佳穂は唇を尖らせて、ブツブツ文句を零している。