「結愛ちゃん、今日は何ケーキにする?ショートケーキ?それとも季節のパイナップルケーキ?」


満面の笑みを浮かべる佳穂の顔も、もう見れなくなる。


「半分こしよう、佳穂」

ふっ、と笑いかければ、佳穂は嬉しそうに目を輝かせる。

「うんっ!」


知らないうちにいつの間にか此処が心地良くなってたなあ。

心地良すぎて離れるっていう決断が鈍りそうになる。


ケーキのお供である紅茶は普段は佳穂が入れてくれるけど、今日は私に入れさせてもらった。

「美味しい!美味しいよ、結愛ちゃん!」

「そう?よかった」

いつも以上に楽しそうな佳穂から目線を滑らせて、湊を見ると目が合って微笑み合う。


そこでやっと決心がついた。

このまま何も知らせることなく此処を去ろうと。