「ごめんねっ。私そろそろ行かないとっ」
散々話し続けた挙句、彼女はそう言って席を立った。
「またお話ししようねっ!」
私は、"ここは私の奢りだから"と伝票を持って去っていく実波さんを呆然と眺めながら、一生話したくないと思った。
彼女は、私の持っていないものを、欲しいものを、持ちすぎている。
それが悔しいぐらい羨ましかった。
とてつもなく輝いて見えた。
フラフラとした足取りでカフェを出れば、そこには隼人が立っていた。
「そんなところで何してんの」
「それはこっちのセリフ。河合 実波と何してんの」
彼の口ぶりと表情で怒っていることがわかった。
でもそれは、見たことのない表情だった。



