「お幸せに、」
彼女の前では強がりたくて、私の感情がバレたら嫌だと、ひとつ嘘を吐いた。
すると、彼女はきょとんとして、それから安堵の表情をする。
「良かったぁ。結愛ちゃんが湊くんのこと好きだったらどうしようって心配してたんだぁ!」
私はその一言に胸を抉られた。
ああ、バレていたんだ。
バレていた上でこの話を聞かされていた。
「実はね、前に湊くんと結愛ちゃんがふたりで歩いてるところを見ちゃってぇ、そのときから不安で不安で…。ほら、結愛ちゃんって美人さんだし」
まゆを下げ、困ったように笑う実波さんが歪んで見えた。
"湊くんは私のだから、取らないでね"
そう言われたみたいな気がした。
目眩がする。
吐き気がする。
どうしたら治る?
息も上手く吸えてるかわからないし、脳も正常に動いているかもわからない。
ただただ、実波さんと話しているこの空間が怖いと思った。



