「ユアはさ、愛は存在しないって言ってたよな」

「言ったよ」


存在しない。

たとえ"愛"を見たとしてもそれは一瞬の幻覚に過ぎない。


と、私は思う。



けど湊は、

「愛は存在するよ」

強い瞳でそう言った。


「……、目に見えないものを信じろって言う方が無理な話じゃない?」

「ははっ!ちょっとそれ、ユアらしいな」

「なにそれ」

「俺が証明してやるよ。愛は存在するって」


お父さんだって、お義母さんだって、お姉ちゃんだって、私にくれたのは偽装の愛だった。


「俺が愛をくれてやる」


湊だってそうに決まってる。

そう思うのに。

今はクサイセリフを吐く湊が堪らなく格好良く見えた。


───心がじんわりと、湊の色に侵食された瞬間だった。