「ほら、腕捲れ」

「…嫌だ」

「いいから、早くしろ」

拒否したのに睨んでくるものだから、私は湊に従うしかなかった。

睨んだ時のオーラがとてつもないのだ。

本当にこの人には敵わないな。


私が渋々腕を捲ると、青い痣が顔を出す。

だから嫌だったんだ。

自分で見ても嫌になるこの痣。

他人から見たら、気持ち悪いに決まってる。


そう思って、ゆっくりと湊の顔を伺うと、彼は眉一つピクリとも動かさず、手当てを始めていった。


「何があったか聞かないの?」

「なら逆に聞いたら話してくれるのか?」

「…話すか話さないかはまた別の話」

「だろ?だったら俺はユアから話してくれるのを待つよ」


それから湊は口を開かず、腕の手当を進めた。

私は湊の揺れる黒髪をぼうっと眺め、考える。


本当に湊に話さなくていい?

こんなに良くしてもらってるのに、話さないのはなんだか道理に外れているように思えた。