湊とふたりっきりになるのは、あの攫われた時以来初めてで。
そして私は今、私の傷口にキスをするという謎の行動をした湊が理解不能すぎて困っており。
このふたつを結びつけると…、浮かんでくる感情はひとつ、気まずい。
「…ぁ、…ユア!」
「…え?」
気がつけば湊は私の顔を覗き込むようにしており、その綺麗な顔が目の前にあった。
驚きのあまり、一度息を止めた。
そして思い出した。
私あの時、傷口に、頬にキスされた時、本当に唇にキスされるんじゃないかと思って…。
思い出した瞬間、私の中の羞恥心が暴れだした。
今にも顔から熱気を吹き出しそう。
「何、湊」
そんな状況でも冷たささえ感じるような声が出たのは、私が"役作り"に慣れているからか。
それとも出てしまっただけなのか。
内心慌てている私と反対に湊は気にしてる素振りも見せない。



