「結愛ちゃん、怖い顔してるよ。戻って!」

「だって愛って…」


あまりにもリアリティーがない。


こんな存在するかもどうかわからないものを当てにして、不安になったりしないのだろうか。


「私は愛ってものを信じてないから」


私がそう言うとそういえばそうだったね、と佳穂は苦笑いした。


「どういうことだよっ」

隼人が睨みを効かせてこっちを向いた。


「どういうこともなにもない。私は"愛"を信じないの」

「なんでだよ」

「…、理由なんてないよ」


私は目を細めて遠くの方を見つめた。

こんな哲学的なことを考えていたら頭が痛くなりそう。


大体私は答えがないものをずっと考え続けるのが苦手なのだ。