「二度とユアに近づくな」

倒れている男の耳元でそう呟くと湊は方向転換し、私のところに向かってくる。


…湊ってあんなに強かったの?


知らなかったが故に衝撃が大きすぎて、固まってしまった。


「ユア」

名前を呼ばれ意識を戻すと、港が目の前に立っていた。

その瞳は揺れている。


「遅れてごめん…」


そんなことない。

言いたいのに、口が動かせない。

湊から目が離せない。


そっと、ひんやりとした湊の手が私の頬に触れた。

心臓が大きくドクンと脈を打った。

患部であるそこが、火がついたように暑くなる。


なんか、すごく苦しい…。


湊の顔がだんだんと近づいてくる。

それと同時に胸の苦しさは増すばかり。

息ができないんじゃないかと思うほどに。






そして湊は、血が滲む私の口端に撫でるような口付けをした。