「入るか?」

溜まり場の前に着いた時、逢坂 湊がそう尋ねてきた。

此処には何回も来たことがあるけれど、そんなことを聞かれるのは初めてで一度思考が停止する。

なんでそんなことを聞くのだろう。


「入らないって答えたらどうするの?」

単純にそう思った。

私がNOと答えたら、このまま回れ右をして帰らされるのだろうか。

逢坂 湊は私の答えに一度目を見開き、その後小さく微笑んだ。


「強引に引っ張ってでも中に入れる」

笑うと可愛く見える整った顔からは想像もできない言葉。

私は胸の前で手をきゅっと握った。


「自分で入れますからお構いなく」


逢坂 湊はまた微笑んで、扉を開けた。