彼女は箸で挟んだ卵焼きをじいっと見つめた。
まるで昔を思い出すように。
「学校に入ったら友達はいっぱい作ろうと思ってたの。だけど、近づいてくる子はみんな私のお金目当てだった。遊びに行ったら毎回『奢って』っていうんだよ?」
そう言って笑うけど、絶対笑いごとじゃない。
そんな日が続き、ある日 香川 佳穂はついにその子たちに言ったらしい。
『今日は奢らない』と。
するとその子たちは、『お金が無いなら用はない』とあっさり彼女を切り捨てた。
「笑っちゃうよね。その子たちは私の友達なんかじゃなかった。その子たちの財布にすぎなかった」
「……、」
そんなに泣きそうに笑うなら、泣けばいいのに。
私らしくないことをふと考えた。



