ことの起こりは些細なことだった。あの公園からひとりとぼとぼと歩いていたのだ。すると……
「むぐっ!?」
後ろから口を抑えられ車に引きずり込まれたのだ。……うん。俺もよくわからんが攫われてしまったという事はわかる。なんでだ?なんでとくに何も無い俺を攫うのかよくわからん。
あれよあれよと手を布で縛られ、猿ぐつわをつけられ、目隠しをされてしまった。もともと抵抗したとしても叶うわけがないのだが、抵抗する気もなく拘束されてしまった。
どうしたものか。縛られてから猛烈にトイレに行きたくなってきた。緊張なのか、ビビっているのか……どっちでもいいがトイレに行かせて欲しい。
太ももをもじもじしてるいと、1人が「トイレか?」と話しかけてくれた。
(そうです。トイレです。監視付きでもいいので行かせてください。)
そう思ってうなづいたのだが、行かせてはくれないようだ。どうやら「もうすぐ着くから我慢しろ」だそうで……
どこにつくんだよ!てか、もう限界だよバカヤロー!
そう考えていると、車が止まった。どこかはわからないがどうやらついたらしい。
車の中には何人かの男がいる。そのうちのひとりが「こいつ、トイレに行きたいらしい」そう言うと残りの男達は「もう少し我慢してもらえ」なんて会話が聞こえてきた。
(もう少しぐらいなら我慢できるから早くしてくれ……)
車のドアが開き、俺は拘束を解かれた。
「は?え?なにこれ?」
俺の思考は一瞬で停止した。
目の前に広がるのは大きな館。……いや、もう城でよくね?ってぐらい大きい。庭もあって本当にどっかのお姫様が住んでそうな所だ。
混乱していると男のひとりが歩み寄ってきた。
「貴方様はこれからここで過ごしてもらいます」
???え、は?ここで過ごすってことはここに住めって事だよな?貴方様?待って。余計混乱した。なにそれ、連れ去られて殺されるかもとか思ってたのに、平凡な俺は実は大金持ちでしたって?
「んなわけあるかー!!!!!」
思わず叫んでしまった。周りの男の人がちょっとびくついている。
すまん。そんなつもりは無かった。頭が混乱しすぎて思わず叫んでしまっただけなんだ。
男が話を再開する。
「お母様から聞いておりませんか?貴方様は須田財閥の最後のご子孫なのです。」
ドラマか!んな設定要らんわ!そう思っていたのだが本当のようで……
「貴方様は今までどおりの生活を望んでおられると伺いましたので住む場所が変わるだけです。あとはなれると思いますので……」
説明ありがとう。よくわからんがなんとか少しは理解した。ドラマみたいな設定が実は俺にもあって、母さんがこんな所に住ませたいとか思ったのか、俺はこれからこの城みたいな所に住むってことだろ?
うん。自分で言ってても意味わからん。なんでそうなった。
頭の中が混乱するも、新学期でもないのに新しい生活が始まった。
