きっかけは、たった1個の消しゴムだった。
結構使っていそうな消しゴムさん……


数学の授業のこと、その日は突然やってきた。
板書の問題を解いていたら、コロコロと私の足元にやってきたちょっと黒っぽい消しゴム。

(え、どうしよう…)

だってその消しゴムの持ち主は、私の前の席でもある鈴木くんのものだったから。
席替えをして鈴木くんの後ろになったのはいいけれど、未だに何も進展ないし(話したことすらない)

足元に転がってきた消しゴムを拾う
鈴木くん困ってるよねきっと…。
ドキドキドキ

少し深呼吸をから、
その肩に触れようとする指先が震えた。

「……っ」
鳴り止まない鼓動が胸をいっそうくるしくさせた。

"トントンっ"

いつも見てきた背中より上の肩を叩いた、すると短い髪が少し揺れ、君が振り返った

ーー目が合った……。

「………」

「…………」

一瞬頭が真っ白になっちゃって、何がどうだかわからない…慌てて消しゴムを前に差し出す。

「あ、あの…これ落ちてました…。」

声が震える。恥ずかしいー!
鈴木くんは手の内の消しゴムをじっと見つめてる。

(ああ、手汗が…)

「ごめん、ありがとう」
目を合わせたまま、聞いた声が私の鼓動をより一層速くした。

鈴木くんは、一言言うと消しゴムをとって前に向き直した。

手触れちゃったよ…。
その後の、数学もちろん全然頭に入らず
いつもと同じ背中をみつめていたのでした。

好きな人だとこんな一瞬のやり取りでも、幸せを感じてしまうのですね。