妻に、母に、そして家族になる

それなのに深く頭を下げてまで、私を頼むなんて……。

考えていたこととは真逆の出来事に呆気をとられていると、肩に信濃さんの手が置かれた。

「良いお友達だね」

「……はい」

「帰ろう。外は冷える」

信濃さんに車のドアを開けてもらい、助手席に座る。

すっかり座り慣れた助手席は心地よくて、ずっと堪えていた眠気が波のように押し寄せてくる。

車が発進すると、体に掛かる微かな揺れが更に心地良くて、意識が遠退いて行く。

ウトウトと微睡んでいる間、信濃さんは私に話し掛けて来ず、そっとしておいてくれていた。

窓ガラスに頭を預けて半ば眠りに落ちていると、肌寒かった体に何かあたたかい物が掛けられる。

瞼が重くて、目を開けるのが億劫で何かは分らなかったけど、温もりを求めていた体は無意識にそのあたたかい物を抱きしめた。

抱きしめて、それに顔を埋めると、信濃さんの香りがした。