妻に、母に、そして家族になる

私が図々しく家にいるせいで、信濃さんの人生を邪魔をしているかもしれないのだ。

だけど

「佳奈は……、私の病気のこと知ってるでしょ?」

「……」

そう切り出すと、今度は佳奈の方が目を逸らす番だった。

私が殺風景な無菌室の病室で病気と戦っているとき、佳奈はよくお見舞いに来てくれた。

だから治療の副作用で、全部の髪が抜けて痩せ細ったボロボロの姿も知っている。

治療が辛くて弱気になっている私を一喝して励ましてくれたり、時には一緒に声を出して泣いてくれたこともあった。

そんな闘病生活の戦友とも言える佳奈には、子供ができない体になってしまったことも知っている。

「私、結婚しても子供ができないから、子供が欲しかったら養子を迎えることになるでしょ?誰と結婚しても他の人の子供を育てることになる。それなら……子供を育てるならハルくんが良いなって思うの」

「文香……」

「わかってる、わかってるよ。そんなの無理だって。私も完全寛解の五年を過ぎたら、地元に帰ろうと思ってたし」