妻に、母に、そして家族になる

まさかあの人の息子だったりして……。

でも、記憶が正しければあの人の薬指に結婚指輪はない。

誰かのものである証はなかった。

他人の空似かな……。

「お金、幾ら持ってきたの？」

「えっと……」

男の子は半ズボンのポケットに手を入れると四枚の百円玉を取り出した。

「四百円」

「じゃあ、のり弁はどう？エビフライとかお魚のフライとか色々入ってて美味しいよ」

「じゃ、じゃあ、それください」

「はい。お弁当が出来たら呼ぶから、そこの椅子に座って待っててね」

「うん」

最初に比べると緊張が解けたのか、笑顔で返事をしてくれる。

そわそわとした様子で椅子に座る姿が可愛くて、思わず笑顔になってしまう。

やっぱり子供は可愛い。

笑顔一つで、ちょっとした仕草で、こっちは簡単にメロメロになってしまう。