妻に、母に、そして家族になる

車に乗ってしばらくすると、ハルくんは眠ってしまった。

眠るハルくんを気遣って、彼との間に会話はなく、私は窓から見える夜景を眺めていた。

車のエンジンの音と、隣車線を走る車の風を斬る音を聞きながら、暗闇を彩るネオン景色をぼんやり目に写す。

こうやって信濃さんが運転する車に乗って、食事に行く日が来るなんて思わなかった。

ちょっと前まで、お互いに名前も知らない、ただの店員とお客さんの関係だったのに。

バックミラーで寝ているハルくんを見る。

彼との関係が、ここまで縮まったきっかけは、ハルくんがひまわりに来たから。

今まで繰り返すだけで緩やかに過ぎていた日々が、今じゃ打って変わって、めまぐるしく過ぎていく。

めまぐるし過ぎて、時間の流れに追いつけず、体だけ置いていかれるような、奇妙な感覚に包まれていた。