そう思っても、人見知りで小心者の私は一歩を踏み出す勇気が出なくて。

後ろ髪を引かれる思いで公園を後にした。

それから着替えている間も、キッチンでチキンライスを作っている間も、少年の姿が頭を引っ張った。

「やっぱり、声を掛けておくべきだったかな……」

夕食後に温かい緑茶を飲みながら、ポツリと呟いた声は静かな部屋に溶けて消える。

勇気を出して「早く帰りなさい」って言えばよかったな。

でも声を掛けて不審者に間違えられるのも嫌だし……。

「はぁ~……」

あの子、ちゃんと家に帰れたかな……。

最近この辺りで子供のわいせつ事件が起きたってニュースでやってたし、心配だな。

ベットに置いてあったアルパカの抱き枕に抱き着きながら悩んでいる内に、どんどん時間が過ぎて、気付けば三十分経過していた。

「あ、薬飲まないと」

立ち上がって、コップに水を淹れた後、机に置いてある薬を飲んだ。

私が飲んだのは白血病の薬。

二十一歳の頃、私は白血病を発症した。