妻に、母に、そして家族になる

しばらく抱きしめて、不安を和らげてあげていると、玄関の方から鍵が開く音がした。

二人で急いで玄関に向かうと

「ただいま」

と、疲労の色を浮かべた信濃さんが部屋に入ってくる。

するとすぐにハルくんが近寄っていき、無言で信濃さんを強く抱きしめた。

「ハル?どうした?」

そう信濃さんが呼びかけても、ハルくんはギュッと抱きしめたまま離れようとしない。

「お父さんが帰ってこなかったから、心配したんだよね」

「そっか……。ごめんな、ハル」

信濃さんが謝れば、ハルくんは首を横に振った。

「橘さんもごめんね。遅くなって」

「いいえ、無事に帰って来てくれて本当に良かったです。私も心配しました」

安心したのか、自然と笑みが零れる。