妻に、母に、そして家族になる

「お父さん、遅いね……」

夕飯を食べ終えてからというもの、ハルくんはずっとリビングにある大きな窓から外を眺めていた。

私も真似をして夜に染まった外の景色を眺める。

触れた窓ガラスは指がジンと痺れる程冷たくて、吐く息で簡単に白く曇ってしまう。

「お父さんが帰ってこないから不安だよね」

そう言えばハルくんは顔を横に振る。

「フミちゃんが居るから平気だよ」

「そう?それなら良かった」

少し間を置き、ハルくんがポツリと呟く。

「お父さん……。お母さんの時みたいに、突然居なくなったりしないよね」

ガラスに薄く映るハルくんの顔は憂いに満ちたもので、子供とは思えない悲しいものだった。

ここに来てからハルくんの口から母親の事を聞くのは初めてだ。

聡い子だから、何か普通ではない何かを敏感に感じ取っているのかもしれない。

私は膝立になると、その小さな体をギュッと抱きしめた。

「そんな事あるわけないじゃない。お父さんはハルくんの事が大好きなんだから」

「……そうだよね。お父さんは居なくなったりしないよね」

背にハルくんの腕が回される。

縋るようなその手は微かに震えてる気がした。

口では平気だと言っていても、休みの日に長い時間信濃さんが帰って来ないのは、やっぱり不安なんだ。

昔、母親が突然姿を消したから、尚更そう感じるのだろう。