妻に、母に、そして家族になる

見慣れた扉の前に立ち、インターフォンを押す。

するとすぐにインターフォンから「はーい」とハルくんの声がする。

「ハルくん、ドアを開けてくれるかな。両手が塞がってて開けられないの」

「うん、ちょっと待てて」

少しの間をおいて、ドアが開かれるとハルくんが笑顔で出迎えてくれる。

「フミちゃん、おかえりー」

「ただいまー」

「あれ、お父さんは?」

部屋に入って来たのが私だけで、不思議そうな表情をしたハルくんが外を覗く。

「あ、えーと……。お父さんはね、さっきそこで知り合いの人に会ったから、ちょっと話してくるって。しばらくしたら帰って来るから安心して」

「ふーん、そっか」

あっさりとした返答だけで、それ以上深く聞かれず、心の中で安堵する。

さっきそこに母親らしき人が来ていたなんて言えない。

「ハルくん、これを冷蔵庫に入れてくれるかな」

「はーい。任せて」

「重いけど大丈夫?」

「うん、大丈夫。だってボク、男の子だもん」

ハルくんが得意気な顔をして、買い物袋を抱えて歩いて行く。

食材を冷蔵庫に入れるのを任せ、私は自室にハルくんへのクリスマスプレゼントをこっそり隠した。

「信濃さん、早く帰って来て欲しいな……」

可愛くラッピングされたクリスマスプレゼントにそっと触れる。

しかしそんな私の願いは届かず、一時間、二時間と過ぎ、夕飯の時間が過ぎても信濃さんは帰ってこなかった。