私は何度も同じことをしないタチなんです!
『……百面相』
私の顔を見て笑いをこらえる煌君の足を、座ったまま蹴ってやる。
『お前はテスト出来たのか⁇』
軽く蹴ったせいか、何も感じなかったのか、平然と私にそう聞いてきた煌君に、今度はちゃんと意味のある溜息をつく。
……煌君の少しだけのドヤ顔がウザいって意味を込めた溜息のつもりだったんだけど、煌君には伝わらなかったらしい。
『そういう煌君は、良かったの?』
『俺はいつも通りだ』
私の問いにサラッとそう言ってのけた煌君に、眉間にシワが寄るのがわかる。
アレだね。
漫画だったら、額に怒りマークが浮かんでるみたいな。
『お前はどうだったんだよ?』
俺のことはどうでもいいと付け加えた煌君が、私の方を見ながらニヤリと笑う。
……絶対馬鹿にする用意してるよね、これは。
最近、分かってきたよ。煌君の癖。
『私は平均くらい……かな』
解答欄は全部埋まってるけど、曖昧なところとかあったしね。
『ふーん……⁇
夏休み確保って感じか』
なぜか私の隣に立っていた煌君が、そう言いながら席に座る。
まぁ、そうだね。
夏休み確保出来たら、私的には嬉しいし。
『煌君、中学の時はどれくらいだったの?』
頭良さそうだし、学年で10番以内とか入ってそうな感じがする。
私の予想だけど……。
『中学?』
私の言葉に少し考える素振りを見せた煌君が、チラリと翠の方に視線を向ける。
……翠?
それが気になって私も翠の方に視線を移すも、特に変わったことがなくで首を傾げる。
『2位だった』
私の距離で聞こえるかくらいの小さい声で、ボソリと煌君がそう言ったのが聞こえ、驚いて目を見開く。
だ、だって、学年2位だよ⁉︎
そりゃあ頭良さそうだなとは思ってたけど、そこまでだとは思わなかったし……。
『お前、いい風に考えるな。
俺は、万年2位だったんだよ』



