siori_side



『教科書30ページ開け〜』



数学担当らしい担任の先生が、教科書を片手にそう言う。



……どうしよう。



黒板に数列を書いていく先生を見て、戸惑う。



教科書、持ってない……。



ノートと黒板を交互に見ても、先生は気づいてくれそうにない。



迷った結果、ばれないように隣をチラッと見て、頭を横に振る。


……隣、朝倉君だよ……⁇

初対面の第一声、何? だった、朝倉君だよ⁇



お願いできない……怖い……。


目線を下に落とし、諦め気味に俯く。
次の授業から、先生に借りよう。


この授業は、もう仕方ないよね……。



『……夏川』



そんな事を考えていた私の耳に、隣から、私を呼ぶ低い声が聞こえる。






……窓側の1番後ろである私の隣は、朝倉君しか居ない。


右は窓、だし。



朝倉君、だよね??



『……何ですか?』



恐る恐る横に視線を移すと、やっぱり朝倉君の声だったのか、こっちを見ていた朝倉君と目があう。



『机、寄せていいか⁇』



そんな私を見て、自分の机をさしながら言った朝倉君。


『つく、え?』


私が朝倉君に聞き返したと同時に、朝倉君が先生を呼ぶ。