あの春、君と出逢ったこと




『なら、行くか? 外。

俺が連れてってやるから』




そんな考えを捨て、栞莉に向かってそう言って、出来る限りの笑顔を作る。




『……良い、の?』


『常識だろ?』




そう言って笑う俺を見て、栞莉も、自分の顔に笑顔を浮かべる。



『そう、だね。

何か、懐か、しい、や……』



『もしかして、俺が教科書見せてやった時のことか?』




目を細めながら何かを考えている栞莉に、そう言って、俺もその時のことを思い出して笑う。


『うん。

あの、時、ね?

煌君、怖くて。
声、かける、の迷って、たの』



懐かしそうに笑う栞莉に、余計笑ってしまう。



『叔母さんかよ、お前』


『おばっ……⁉︎』



そんな俺の発した言葉に反応して、抗議しようと栞莉が足を踏み出した瞬間。



グラリ、と栞莉の体が傾く。


『栞莉……っ‼︎‼︎』


急いで椅子から立ち上がり、栞莉の体に手を伸ばす。


『……あっぶね…っ…‼︎

大丈夫か? 栞莉』


俺の腕に支えられている栞莉に、そう声をかけるも、返事が返ってこない。


『……おい、栞莉⁇』