あの春、君と出逢ったこと






自分達の教室の扉を見つけ、扉に手をかけて音を立てないように静かに扉を開ける。






そのまま教室に入ると、当たり前のように人影は見当たらず、教室内を、夕日が静かに照らしていた。




机に指を滑らせながら中を進んで行き、ひときわ存在感を放つそれを見て、呟く。



『……黒板』




初めてこの教室に入った時、どうすれば良いのかわからなかったから。




取り敢えず、黒板に名前を書いたんだったっけ。



そう考えると、いつも見ていた黒板が懐かしく感じた。



どこか、音を立ててはいけない気がして、静かに、音を立てずに歩み寄る。




あの時は、確か……。




『白い、チョーク……』


カツ…カツ…と。



やけに、黒板に文字を書く音が響く。

あの時書いた“夏川栞莉”



その自分の名前の代わりに、黒板に書いたのは、彼の名前。





“朝倉煌”


『……煌、君ッ……』





自分で書いた名前のくせに、その名前を見つめた途端に、頬に、温かいものが流れるのを感じる。