あの春、君と出逢ったこと




『栞莉⁇』



『ん? あ、何でもないよ』




いきなり黙り込んだ私の顔を覗き込み、首をかしげる翠に、微笑みながらそう言う。

『……なら、良いのよ。
速くいくわよ?

そうしないと、快斗達と遭遇するわ』

心底嫌そうな表情でそう言った翠を見て、ニヤニヤとした笑みを浮かべてみせる。


『……何よ?』


『んーん。付き、合ってるのに、そんな事、言っちゃうん、だなって‼︎』


途切れ途切れになる私にはふれず、顔を赤くしていく翠。

『そ、それとこれは関係ないわよ』


焦りながらそう言う翠を、ニヤニヤとした顔を崩さずに見続ける。


『煩いわね』

『喋って、ないよ?』



顔が煩いのよ。と言って先を歩いていく翠の後ろを、なるべく自然についていく。



『……遅いわよ』

『ごめんごめん』


そんな私に、いつも通りの態度で接してくれるのは、翠なりの優しさだと思う。


『……翠』



『何かしら?』



遅いなんて言いながら、私の歩調に合わせて私の隣を歩いてくれる翠に声をかける。


『煌君、怒ってる⁇』


今1番心の中にある事。

それがこの事だ。


1ヶ月ちょっと前、返事をしに行くはずだったのに、倒れたせいで煌君のもとに行く事が出来なかったから。