靴を履いて、翠の返事に笑顔を返した私が翠の家を出ようとドアノブに手をかけようとした瞬間だった。


ドアが歪んだかと思うと、周りが白くなっていく。

……視界が、大きくグラつく。

『ヤバっ……』


倒れそうになる身体を支えるため、踏みとどまった足に力を入れるも、力が入らず、地面に身体を強く打ち付ける。


『……っ』


背中を強く打ちつけ、一瞬息が止まった。



『栞莉……っ!!』


いきなり倒れた私に、慌てて翠が駆け寄ってくるのが見える。


『……あ……チョ、コ……』


倒れたせいで、綺麗にラッピングしたチョコが崩れ、私の横に落ちているのを見つけて左手を伸ばす。


『……う、ごか、な……っ』


それと同時に、鋭い痛みに襲われて動きを止める。


痛みが治まったと感じた途端、顔から血の気が引いていくのを感じる。


何度も、何度も。


試してみるけど結果は同じで。


『ど、して……!』


なんで、なんでなんで!?


チョコをとるため何度試してみても、チョコに手が届かない。


左手が、動かない。



『……いや、だっ』


そんなの、嫌だ!

煌君が待ってるのに……っ。



『み、どりっ……私……』


『栞莉、今話さないで‼︎』



途切れ途切れに言う私の言葉を止め、翠がどこかに電話をかける。


『急いで来てください‼︎
友達がっ……』