後ろでそう叫びながら抗議する私の言葉など聞こえてないのか。


立ち止まりもせずに、先を歩いていく煌君に合わせて、急いで足を動かす。



そりゃあ、煌君からしたら早歩き程度かもしれないよ?



でも、私と煌君のリーチの差じゃ、どうしても小走りになるの、私は!





まぁ、文句を言っても聞かないんだろうけど。


目の前を歩く煌君の背中を眺めながら、そんな事を考える。




2人で歩く道だし、肝試しだし、怖いし。
本当、他の男子じゃなくて良かった。



きっと見栄を張って、怖がりながら進んでいくだけだったはずだし。


そう思った時だった。



『……煌君で良かった』






無意識に、私の口からそんな言葉が漏れ、煌君が立ち止まり、私は自分の口を両手で覆い隠す。


……私、今なんて言った?


無意識に、すごい言葉を発したよね⁇





誰かに違うと否定してもらいたくても、立ち止まったまま動かない煌君が、なりよりの証拠だと表していて。



私と煌君の間に、気まずい沈黙が流れる。



この気まずい雰囲気を妥協しようと、私が口を開いた瞬間だった。



立ち止まっていた煌君が、私の掴んで、また歩き始める。



『煌君……っ⁉︎』



さっきと比べ物にならないくらいのスピードで歩いていく煌君に驚いて、慌てて声をかける。


そんな私の言葉を無視せずに、煌君が何か呟いて、私の手を握る力を強めたのを感じて、顔に熱が集中していく。




……今日の煌君は、本当にどこかがおかしい。



いつもの煌君はこんなに甘くないし、こんなに優しくない。



意地悪で、文句ばっか言ってくるから、私も言い返せるのに。





こんな状況、未経験すぎて、イマイチ反応の仕方がわからなくて戸惑う。