『翠、おはよー‼︎』



いつもよりずっと思いリュックを背負いながら、視界に入った翠の元へ駆け寄る。



『おはよう、栞莉。

今日は早いのね』



いつも遅刻ギリギリ登校をする私がちゃんと登校してきたのに驚いたのか、そう言って翠が少し目を見開いた。




『今日は、お母さんに送ってもらったからかな。

もう2度と乗りたく無いけど……』




お母さんの運転の荒さを身をもって体感して、昔吐きそうになった事を思い出す。


そういえば、お母さんって運転も下手だったな、なんて、助手席に乗りながら思い出してしまった。




『ご愁傷様ね』


私の気持ちを察したのか、苦笑いを浮かべた翠がそう言って、私の背中を軽く叩いた。




『翠チャン、栞莉チャン!』



翠と話しながら歩いていると、後ろから名前を呼ばれ、思わず振り返る。



『朝から煩いわよ、快斗』



私と同じように振り返った翠が、快斗君に向かって開口1番に毒を吐く。


その毒に突っかかった快斗君によって、翠と快斗君の間に、口喧嘩が始まってしまった。



……翠と快斗君って、本当、不器用だよね。


そんな翠と快斗君を見ながら、思わず苦笑いを浮かべる。



『……煩え』



突然横から聞こえてきた不機嫌な声に、視線を横に向ける。

横にいたのは、案の定迷惑そうな顔を浮かべる煌君で。



翠と快斗君の喧嘩が長くなるにつれて、煌君の眉間によったシワが、だんだんと深く刻まれていく。



……ダメだ。


この状況を打開するためには、とりあえず、煌君の機嫌を治さないとだよね?


何をして良いのかもわからず、適当に煌君に声をかける。



『……お前、今日は早いんだな』



私の言葉に私を見た煌君が、驚いたように少し目を見開いてそういう。



少し前に、あなたと同じことを言って同じ表情をした人を見かけましたよ。

なんて、心の中で呟いて思わず笑ってしまう。




『お前が思ったこと、当ててやろうか?』


笑い出した私を見てそう言った煌君が、ニヤリと笑う。



『翠と俺が、同じリアクションをした……みたいなもんだろ』



そう言った快斗君に、改めてそう感じて、こみ上げてきた笑いを抑えきれなくなる。