驚いたのか、一歩後ずさった煌君は、すぐいつものように戻り、呆れた顔をして腰に両手を当てた。
『いちいち煩え』
『だって、いいの?』
『バレなけりゃな』
恐る恐る聞いた私をからかうように、口角を上げてそう言った煌君をジロリと睨みつける。
『そろそろか』
そんな私の睨みを、またまたお得意のスルーでかわした煌君は、携帯を見てそう言った。
『花火?』
『ああ』
……結局、快斗君と翠には合わなかったな。なんて。
今更になってそんな考えが頭をよぎる。
『快斗達なら、今頃どこかで見てるだろ』
何となく、だったのに。
そんな事まで分かってしまった煌君を、本当尊敬するよ。
『そのままくっつけばいーのに』
そんな事を口にした瞬間、下で輝いていた光が次々と消えていく。
したから、カウンドダウンをする声が聞こえてきて、思わず私もそれに乗ってカウントダウンをする。
『3……2……』
『1』
煌君と声が重なった瞬間、目の前に大きな花が打ち上がった。
……目の前って。
『煌君、ここ、凄いね‼︎』
『知ってる』
本当に近い。
本当に目の前なんじゃないかってところであがっては消えていく花火を見て、思わず息を呑む。
前まで行ってた祭りの打ち上げ花火なんか日にならないくらい綺麗で、また見たいと思えるような花火で。
『すっごい綺麗』
思わず、そんな言葉をつぶやいてしまう。
また、見たい。だなんて。
こみ上げてくる涙を、煌君にばれないようにこっそりと拭う。
ダメだな、こんなんじゃ。
せっかくの花火なんだから、明るい気持ちで見ないとね。
『……そろそろ終わるな』
何度も見ているからなのか、終わるタイミングがわかるかのように呟いた煌君を見る。
『煌君、来年も来る?』
『……まぁ、来るだろうな。
毎年来てるから』
『そっか』
無理やり口角を上げて、また花火を見つめる。
近いからか、光と音がほぼ同時に聞こえてくる花火を。