「はぁ、なんとか間に合った……」

川崎高校、2年7組。
教室に滑り込むと、友達である安村 美穂(やすむら みほ)と目が合った。

「絢葉、おはよ」

絢葉とは私の名前。林 絢葉(はやし あやは)。
覚えるような価値のあるものではございません。

「今日も遅刻ギリギリだね、また吉澤くんちの洗濯物でも見てたの?」
「しーっ、声が大きい!」
「否定はしないのね……」

美穂がため息をついた。

「んで、今日はなんか収穫あったの?」
「聞いて!!がっつり収穫あったよ!!」

私は『収穫』のことを思い出して、ガッツポーズをする。

「はいはい、聞くよ。」
「あのね、吉澤くんの…」
「林!!」

「よ、吉澤くん?!」

後ろから急に名前を呼ばれたと思ったら!
私、今吉澤くんに声をかけられている!!
じゃないわ、なんだろう?

「なぁ、なんで今日あんなところにいたの?」
「え?!」