「 む、むり 」





小さな声で、目の前の彼に言い放つ 。





私には好きな人がいるし、





しかも、いきなり段ボールから出てきた






いわゆる不審者となんて、考えられない 。







レンタル彼氏って、何なのかさえ




よく分からないのに ……





「 あ゛ ? 」




ソファーに座ったまま頭をうしろにいる私に





傾ける 。





「 何で ? 」




声色からしても分かる。





多分不機嫌になったって 。





でも、不審者なんかには、負けない。





「 わた、私、好きな人いるし…… 」






どもりながら、







でもちゃんと自分の思っている言葉を






伝える 。






「 あと、 箱から出てきた知らない人と




付き合うとか無理だし …名前も知らないし 」







怖い 。 怖い 。怖い 。






出てって 。





言葉にできない思いが私の中で





膨れ上がる。




ギシッ 、 と ソファーが音を立てた。





私は俯いたまま、ぎゅっと目を閉じる。





近ずいてきているのがわかる。





な、殴られる …… 。





ぎゅっと歯をくいしばる。







「 お前 … 」






目の前にいるのだろう 。






声が 、 近い 。