「 お前 …好きな人いるのか ? 」






怒らせたはずの彼から聞こえてきたのは




優しくて、 低くて、





どこか安心できる声だった。






怒ってない ?





「 目…開けろよ 。 」




彼の手が私の顔に伸びる。




ひたっ、と冷たい手が頬に触れる。





ぴくっと、反応する私の体。




殴られると思って強張っていた体。




彼の優しい声色と 触れる冷たい手 。





私が目を開けようとしたとき、




ふわりと風が揺れ…





「 !? 」






目を見開く 。




目の前には彼の綺麗な顔 。




目を閉じているまつげは長くて、





女の子より色っぽい 。







「 な、な、 なに !? 」






彼の肩を押し、距離を取る。





服の袖でまだ温もりが残る唇を




拭う。





「 なに? って、キスだけど 。 」







しれっとゆう彼 。







唇を舐めニヤリと笑う 。







あ、ありえない 。





「 キ、キス …って 」





いきなりキスなんて、





さっきの私の話聞いてたの !?





「 顔、真っ赤だけど 。 」





両手で頬っぺたを触る 。




あ、あつい ……





「 もしかして、初めてだった ? 」







唇に笑みを湛えながら、問いかける。







さらに赤くなる私の顔。






それがわかるほど顔があつい 。





両手で頬を隠しながら目の前の彼を






睨みつけた。






そんな私を見て







ふっ、と笑い …







くしゃ 。







っと私の頭を撫でた 。







…… 懐かしい 。







思い出せないけど、ふとそう思った。






何でだろう







前にもこんなことあった気がする。







「 真央 。 」






ぽそり、と、目の前の彼が呟いた。





「 …っえ ? 」







考え事をしたせいでよく聞きとれなかつた 。