守りたいのはお前だけ




キーボードを打つ手を休めることなく文章を打ち続けること30分。



「……よし、終わり」



最後の文字を打ち終わり、固まった体を伸ばす。


…風呂入って寝るか。



そう思って立ち上がった時。



「っ…!?」



背中にドンっという衝撃が来て、腹に華奢な腕が回された。



その衝撃の正体は、もちろん亜美しかいない。


…起きたのか。



「亜美、どうした」



振り返って俺にしがみつく亜美の顔を覗き見ると、頬に涙が伝っているのが見えた。



「また怖い夢でも見たか?」



亜美の涙を親指で拭いながら問いかけると、亜美がコクンと小さく頷く。



ここに来たばかりの頃、亜美は毎日うなされて何度も目を覚ましていた。


最初は慣れない土地と家で不安だからだと思っていたけど、どうやら違うようで。


聞いてみたら、亜美は何度も祖母が亡くなった瞬間の事を夢で見るんだと言った。



不思議なことに、俺とくっついて寝ると亜美はぐっすり気持ちよく眠れるらしい。



…ようするに、俺は精神安定剤みたいなものだ。



「亜美、俺風呂入ってくるから。ちょっと待ってろ」



ぽんっと頭の上に手を乗せると、亜美はもう一度頷いて俺から離れた。