……え?
その暖かいものの正体に気づくのに、時間はかからなかった。
だって、その暖かさの正体を私は知っているから。
暖かくて、安心する体温。
私は、綾都に抱きしめられていたんだ。
少しして、綾都が私の耳元で優しく言った。
「亜美、もういいんだ」
もう、いい?
「もう我慢なんてするな。泣けよ」
綾都はそう言って私の頭を引き寄せ、更に強く、けれど優しく私を抱きしめてくれた。
私…泣いてもいいの?
甘えてもいいの?
ほんの少しだけ保てていた私の強がりは、次の綾都の言葉で、いとも簡単に崩れた。
「よく頑張ったな。俺しか見てねぇから…俺には、弱さ見せたっていいんだよ」
「っ……」
私は綾都の胸で思いっきり泣いた。
おばあちゃんが亡くなってから、初めて思いっきり泣くことができたんだ。
泣いちゃいけないと思ってた。
辛いって、言っちゃいけないと思ってた。
だって、おばあちゃんが心配すると思ったから。
我慢しなくちゃ。
感情を押し殺さなきゃ。
ずっとそう思ってきたから。



