そんな悲しそうな顔させたかったんじゃない。



ありがとうって。

ただ、ありがとうって言いたかっただけなんだよ。



綾都は下を向いたまま。


声が出ない私は、綾都の顔を上に向かせることすら出来ない。



…誤解を解かなきゃ。


テーブルをコンコン、と指で叩く。


その音で綾都が顔を上げた瞬間、私は微笑んだ。


私は大丈夫だよ。

嫌なことを思い出したんじゃないよ。



そう伝えるために、思いっきり笑ったの。