さて、帰るか。
警察官でもない俺がずっと警視庁にいても邪魔になるだけだ。
「戸川さん、俺はこれで失礼します」
「あぁ、また頼む」
戸川さんに挨拶をして、帰ろうと鞄を持った時。
「綾都、親父が呼んでるぜ」
仕事がひと段落したのであろう、片手にコーヒーを持った兄貴が俺を呼び止めた。
「親父が?なんで」
「知らん。早く行ってこい」
親父からの呼び出しなんて滅多にねぇぞ。
仕方なく親父のいる部屋までいき、ノックをした。
「失礼します」
中に入ると、親父が書類の重なった机に向かい、一枚の書類に目を通していた。



