しばらくして戻ってきた綾都の手には、2人分の美味しそうな豪華な夕食。
それを2人で一緒に食べた。
誰かと一緒に食べるのも久しぶりで、少し涙が出そうになったのを堪えた。
美味しい料理に、最初はどんどん口に入ったのだけれど、やっぱり気持ち悪くなってきて箸が止まった。
それに気づいた綾都が、私の様子をみて心配そうに声をかけてくれる。
「気持ち悪いのか?」
「っ……」
「無理して食べなくていい。落ち着いたら少し横になってろ」
私が頷いたのを確認すると、綾都は食べ終えた食器をもって、また部屋から出て行った。
どうしよう。
呆れちゃったかな。
…面倒臭いと思われたかな。
ソファに横になりながらそんなことを考えているうちに、また涙が溢れそうになった。
涙を堪えていると、綾都が部屋に戻ってきた。
「亜美、りんご持ってきた。ちゃんと食え」
目の前に差し出されたのは、うさぎの形をしたりんごだった。
これ…。
「果物なら入ると思って剥いてきた」
綾都が、私のために…?
『ありがとう』と伝えて、りんごをかじる。
シャキッといういい音がして、口の中に甘いりんごの果汁が広がる。
…美味しい。
「よかった、これなら食えそうだな」
そう言ってほんの少し微笑んだ綾都は、また私の頭を撫でる。
子供扱いされてる?
そうされても、今の状況じゃ文句も言えないのだけれど。



