守りたいのはお前だけ




どんどん近づいてくる窃盗犯の男の人。



「退けー!!邪魔だっ!!」



そう叫びながらポケットから取り出したのはカッターナイフで。


それを見た私は背筋が凍りつくような感覚に見舞われた。



あの日も、そうだったから。


おばあちゃんは、ナイフで…っ。



「退くのはお前だ、クズ野郎」



イヤ…。


やめてっ…!!




2人が接触する寸前で、私は目を逸らしてギュッと目を瞑る。



ーーーバキッ!!



………。




…あ、れ?




あたりがシン、となって恐る恐る目を開けると、窃盗犯の男の人が仰向けに大の字になって伸びていて。


その横で綾都がツンツンとその男のひとの頬を指で突いていた。



え、どうなったの?



「あー、完全に伸びちまった」


「お前もう少し手加減しろよ」


「これでも軽く蹴ったんだけど」



どうやら綾都が蹴りを入れたらしい。


周りに集まってきた人達は感嘆の拍手をしてる。


鞄を盗まれたという女性は何度も綾都に頭を下げてお礼を言ってた。


でも私は、綾都が無事だったということだけが頭を埋め尽くしていて、ヘナヘナと床に座り込んだ。



「え、亜美ちゃん!?大丈夫!?」



みりいちゃんの心配そうな声に力なく頷く。


よかった…。


綾都が無事でよかった…っ。