「ハッ…流石だな、海都」
「お前なぁ…いきなり殴りかかってくんなよ。本職に闇討ちされちゃ敵わねぇよ」
何言ってやがる。
涼しい顔であっさり受け止めやがったくせに。
「ま、お前の腕が鈍ってないようで安心した」
「伊達にお前の親父に鍛えられてねぇよ」
だろうな。
親父なんか、海都も警護官にさせようとしてたもんな。
「で、お前が相談なんて珍しいじゃん。何かあったか?」
ペットボトルのお茶を飲みながら、さっそく海都が話を振ってきた。
「あー、相談っつーか…聞きてぇことあってさ。お前、吉野財閥の令嬢のボディーガードやってるらしいじゃん」
「んぐっ…!!ケホッ…お前、何で知って…」
そんなに聞かれて慌てるようなもんか?
「親父から聞いた。で?どうなんだ、そのお嬢様とは」
「どうって言われてもな。うちのお嬢様は極度の男嫌いで、男が近づくだけで震えるわ、ぶっ倒れるわで大変っちゃ大変だな」
マジか。
なんだそのお嬢様は。
俺だったら仕事投げ出すけどな。
「まぁ、容姿まで良いから男が次から次へと寄ってくるんで、護衛のしがいはあるな」
そして「最近やっと俺が触れても平気になった。まだ他の男だと失神するけどな」と言って海都は微笑んだ。
そんな海都の表情に、俺は驚いた。
お前、そんなに柔らかく笑う奴だったか…?って。
俺の知ってるこいつは、女に対しては冷たい作りものの笑顔しか向けない奴だったから。
人って変わるもんだな。
「護衛始めてどれくらいなんだ?」
「あー、もう少しで3ヶ月かな。つか、俺のこの話とお前の話がどう関係してんだよ」
海都くん、よくぞ聞いてくれた。



